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マーケティング・コンサルティング・サイト制作
ITベンチャー企業の社員がノウハウや
仕事の試みを毎週綴ります

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受け身なクリエイターのためのキャリアパスの広げ方

こんにちは。元Webクリエイター・現Webマーケターのさっちゃんです。
 
クリエイターのみなさん、作ることは好きですか? 私も大好きです。
より良いものが作れたり、技術が向上したり、「自分の手で良いものを作りたい」と思えることが、仕事のやりがい・モチベーションにつながっている人も多いと思います。
 
ところで「良いものを作りたい」の、良いものってなんですか?
今、あなたは何のためにそれを作っていますか?
 
仕事として作る「良いもの」の正解はただ1つ、「お客様(クライアント)が期待している、またはそれ以上の成果・利益を出せるもの」です。
 
この視点の重要性に気づいたきっかけは、Webマーケティング課への転属でした。
僭越ながら、自分のこれまでのキャリアパスをもとに、クリエイターとしての成長のきっかけと意識の変化、身に付けてきたスキルについて紹介してみようと思います。
 

社会人一年目~Web制作覚えたて

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前職は小さなシステム会社で、Web制作全般を担当してきました。新卒時点ではHTMLの書き方をかろうじて知っているのみで、デザインなんて一度も習ったこともない状態からのスタート。ビジネスマナーを教えてくれる先輩はいたものの、技術面では前任者がおらず、Web制作は独学で、コーディングもデザインもとにかく徹底的に「観察・真似」する作業から始まりました。
 
コーディングは、まずはマニュアル通りに作ってみて、これを使うと何が起こるのか、なぜ必要なのかを後から理解していく作業。デザインは、先人が作ったものをひたすら観察する作業。
 
まだ素人同然の自分が作るデザインは、なぜこんなに不格好なのか、使いにくいのか?
世の中の美しい・使いやすいと感じられるデザインとどこが違うのか?
それらはどうやって表現されているのか? その差を探して埋めていき、再現する方法を自分の中に落とし込むことで少しずつ出来ることを増やし、小さな成長を重ねていきました。

 

独学でなんとかなったスキル

  • HTML
  • CSS・Sass
  • Javascript・jQuery
  • WordPress
  • Photoshopの操作
  • Webサイトデザイン
  • レスポンシブWebデザイン

 

先輩の助力によって身に付けられたスキル

  • PHP(特にセキュリティ対策関連)
  • DNS取得・設定
  • Illustratorの操作
  • バナー・クリエイティブ制作
  • DTPデータ制作、入稿ルール
  • クライアントへのヒアリング・Webサイトの企画

 
一口にWebサイトを作ると言っても、必要な作業や技術は多岐にわたります。それらが仕事で必要になったタイミングで、ぶっつけ本番で覚えてきました。
 
自分で一から作ったデザイン、書き上げたコードがWebサイトとして命をもって動き出し、動作確認のたびに着実に育っていく様子は……なかなか人には言えませんが、とにかくかわいい! まるで我が子かというくらい愛着が湧きます。CGIを組み込み、コードが複雑化していくにつれて不具合に悩まされる時間が増えるのも、なんだか子育てに似ていますね。
 
この頃あった出来事でひとつ、特に思い出に残っていることがあります。Webサイトを作ってほしいと訪ねてきたクライアントに、上司が「そのWebサイト、本当に必要ですか?」という質問を投げかけたのです。「欲しいと言ってわざわざ来てくれた相手に、なんてことを言うんだ」と驚いた記憶があります。
 
この言葉の本質を理解できるようになったのは、もう少し後になってからでした。
 

初めての転職~大規模制作のルールを知る

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コーディング・プログラミングはマニュアルに頼れる分、自力で何とかできるつもりでいました。しかしデザインはそうもいかず、力不足を感じる日々。デザイナーと一緒に仕事をし、もっとレベルの高いところで磨かれなければ成長できないと考え、前職で4年間勤めたあと、デザイナー志望でリスペクトへ転職。
 
しかしやはり、独学で数年Webデザインやってみた、という程度でのデザイナー志望は甘かった……デザイナーとしては不合格となりましたが、コーディング経験を買っていただき、HTMLコーダーとして入社することになります。
 
Webデザイナーとしてのキャリアパスをここで曲げてしまうのかと悩みましたが、リスペクトでは希望次第で部署の転換も可能だということで、「コーディング業務の中でデザイン技術を盗み、いずれデザイナー部門への転属を目指そう」と企んでいたのを覚えています。
 
小規模Webクリエイターから、HTMLコーダーの一員”として働くようになり、チームでの制作手順を覚えてきましたが、その中で特に大事だなと感じたのが「Webサイトは1人で作るものではない」ということです。
 
自分はリスペクトに入って初めて、サイトを引き継いで更新する、複数人で協力して1つのサイトを作るという経験をしました。そこで最初に取り組まなければならないのは、既存コードの解読です。コーディング作業全体の中で、解読に費やされる時間は想像以上に多く……サイトを見る人のためだけではなく、更新する人のことも考えてマークアップを行うことの重要性が身に沁みました。
 
以前は、同じデザインを表す記述が1つのサイトで何度も出てくることに、内心ヤキモキしたこともありました。しかしそれは決して無駄ではなく、複数名で更新作業をするときに、他ページへの影響を考えなくていいようにするための仕掛けだったのです。
 
自分の役割から前へ前へと視界を広げていくことで、会社の中やクライアントの視点に近づくことができます。同じ仕事でも、環境を変えることで視野が広がり、出された指示の意図や工程など全体のフローを理解することで、自分がどう動くべきなのか、分かるようになってきました。
 

リスペクトのコーダー部門(現:フロントエンド課)で新たに身に付けたスキル

  • 開発用テキストエディタ
  • MovableType
  • タスクランナー(Grunt、Gulp)
  • バージョン管理システム(Git)
  • 開発環境構築(xampp)

 

転属~ツールの活用・入門

 
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「作ること」一辺倒だった自分の考えに変化があったのは、入社1年ほどたった頃。
 
サイト運営・集客・成長を担当するオウンドメディア部門(現:Webマーケティング課)の新設に伴い、こちらへ転属となりました。前職で広く浅く制作をしていた経験を買ってもらえたのか、せっかくのオファーなので受けることにしました。
 
自社サイトの広告ページ作成・改善とWeb広告の運営、続けて、クライアントサイトのメディア運営・集客を担当。サイトの売上を上げるための更新に挑戦することになりました。肩書きもHTMLコーダーからWebプランナー、Webマーケターと変化しました。快適なサイトを作るという明確な正解のある仕事から、正解を自分で探していく仕事になったのです。
 
「売上を上げるための更新」の正解を探す足がかりとなるのが、Googleアナリティクスをはじめとする各種計測ツールでした。Webサイトがいつ、どんなデバイスで、どのページが何回見られているのか。これらのデータの見方を学ぶと、上質なWebサイトとは何なのかの見方がガラッと変わりました。
ぼんやりとしていた「良いもの」のイメージが、明確な数字になった途端、改善したいポイントがいくつも見つけられました。
 
以前の自分の原動力は、「作ることが好きだから、自分の満足のために作る」だったのかもしれません。満足感が結果的に視野を狭め、成長を停滞させていたのも事実でした。視界を後ろの方へ広げ、より利用者(エンドユーザ)に近い視点へと近づくことで、自分の仕事が世の中へどう影響するのか、より良くするには何をすべきか、考えられるようになりました。
 
「そのWebサイト、本当に必要ですか?」
 
かつて前職で上司が発していた質問の意味を、ようやく理解しました。
「クライアントが期待する成果を上げる」ための正解が、言われた通りのサイトを作ることだけとは限りません。要望を短絡的に捉えずに、その先にいるエンドユーザのことを考えて喜ばせることが、結果的にクライアントの利益につながるのです。
 

サイト運営担当となって新たに身に付けたスキル

  • アクセス解析ツール(Google Analytics)
  • リスティング広告ツール(Google AdWords)
  • ヒートマップ解析
  • 順位解析
  • SEO
  • コンテンツディレクション・進行管理

 

いざ、ツールの活用・実践

 
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Webサイトの改善は、「初めて見た人はここの意味が分かりにくいかも」「この言葉で検索して来てくれたということは…」といった仮説を立てて実装し、数字がどう変化したかを検証する作業の繰り返しです。サイトにアクセスしてもらい、満足してもらうことだけを考え、ひたすら試行錯誤します。
 
そのかいあって、クライアントサイトの運営では、1年半ほどの期間で商材キーワードを100位圏外から11位まで上昇させ、月間アクセスユーザ数も当初1万件の状態から16万件までアップさせるという実績を上げることができました。サイト内に良質な記事を蓄積し、成果は現在も右肩上がりに伸び続けています。改善のたびに数字がぐんぐんと上がっていくのは非常に気持ちが良く、自信もついていきました。
 
同時に、視野が広がったとはいえ、まだまだ見えなかったこともありました。
「アクセスは増えたが申し込みが増えない」「申し込みが増えても受注につながらない」という課題に、当初は気づいていなかったのです。
 
多くの人が集まったとしても、ちゃんとゴールまでたどり着いてくれなければ、サイト運営として成功とはいえません。効果的に集客したいなら、多くの人に興味を持ってもらえる、取っつきやすくてライトなコンテンツが必要です。一方、売上を上げるためには今まさに買いたい人だけを呼び込むような、真剣で信頼性の高い、ディープなコンテンツが向いています。
 
つまり、「人が集まり、売上も出せる」コンテンツの両立は難しいのです。まったく正反対の性質を持っているため、両方を一度に目指すと、どちらにも響かない、中途半端なものが出来上がってしまいます。目的の違うコンテンツ群をつなぐ橋渡し、ストレスのないインターフェース、そしてアクセスからゴールまでの連携。すべてが噛み合わないと、Webサイト制作は成功しないことを知りました。
 
サイト全体、クライアントやエンドユーザのこと、そしてそれらを取り巻く環境全体を見渡せる広い視野と、小さな課題を解決できる鋭い視点の両方が必要だと痛感しています。これからも、本当に良いサイトを作るための模索と成長を続けていきます!
 

キャリアパスを振り返って

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ここまでが自分の、およそ8年間のキャリアパスです。
Webクリエイターとしての成長の軌跡は、いつの間にか想定していたキャリアパスとは変わっていました。しかし今までの積み重ねは、決して無駄にはなっていません。
 
見る人の心に響く「すごい」デザインはまだ作れませんが、些細なデザインの手直しや追加は自分でさっと行うことができます。リスペクトでは制作課で役割分担をしていますが、これができることで他の社員の負担が減り、時間短縮につながったりします。
 
デザインとコーディングの複合的な考え方が必要となる作業や、コーディングとマーケティング両方の知識が必要なSEO施策などの技術がすんなりと理解できたこと、仕様を理解したうえで依頼を出せるのでスムーズに話が進むこと。これらも複数の視点を持てた恩恵だと感じています。ちゃんと強みとして、残っているんです。
 
「作るのが好きだから、腕一本で勝負したい」。クリエイターには、そう考える人が多いかもしれません。しかし同じ職種でも、視野が広い方がずっと効率的に動けるし、より楽しさも感じられます。
 
自分自身受け身な性格であるため、あまり大胆なチャレンジはできていません。そんな人がキャリアパスを広げていくためのヒントとは、「自分のできることをベースに、視野をひとつ隣、前、後ろに広げてみる」ことじゃないでしょうか。知らないこと、新しいことに対して慎重な人も、これならできるかも……と思いませんか?(笑)
 
Web制作に携わる人、つい受け身になりがちなクリエイターのキャリアパスの一例として、参考になるものがあれば幸いです。