【広告系・WEB系企業の営業マン日誌】その1:営業って何?
営業マンって何? とてもシンプルな質問ですが、答えるにはちょっと考え込んでしまうテーマですよね。僕自身、営業の経験年数はたかだか10年弱。もし、20年以上ずっと営業マンとして頑張られてきた方がこのブログに訪れたら、「営業とはこういうことじゃない!」とまるで波◯がカ◯オを怒鳴りつけるかのような勢いでお怒りになるかもしれません。
とはいえ、僕もそういった上司・先輩たちから「営業とは何か」について叱咤激励されながら学んできたので、むしろ言われたことをそのまま、なるべく忠実に書きたいなとも思っています。今回は、リスペクト営業の端田が記憶に鮮明に残っている言葉や内容をいくつかご紹介します。
営業とは生業の営みである
「営業とは生業の営みである」と考えます。weblio辞書やgoo辞書を参考にし、私自身の解釈を加えるとそれは以下のような意味になります。
生業(なりわい):生計をたてること。つまり、誤解を恐れず言えば「食っていくこと、お金を稼ぐこと」です。
営み(いとなみ):仕事。はたらき。勤め。
つまり、「営業とは、生計をたてるための仕事」なのです。
何のために? 誰のために?
では、誰のために働き、生計をたてるのでしょうか? シンプルに考えれば答えは1つで、会社のため、全社員のためです。つまり、経営がうまくいくように(いくような)仕事を受注してくることが、営業として実行しなければならない業務となります。
経営がうまくいくということは、社員が労働に対して相応の対価が支払われ、会社にも利益がきちんと確保されているということ。そういう状態になるように、なんらかの仕事を受注してくる(発注をいただいてくる)ことが営業としての任務・責務となります。
ここで少し話は変わりますが、僕は学生時代、営業という職業に偏見を持っていました。あんな職種には就きたくないとさえ思っていたほどです。当時の僕は「営業とは生業の営みである」という言葉の意味をこんな風に履き違えていました。
営業は経営がうまくいくように仕事を受注してくる職種。だから、自社が取り扱う商品やサービスをたくさん売ってこないと、上司から毎日くどくど怒鳴られる。そうやって、売上だけを目的にクライアントと接触していると、いつの間にか、良いクライアントと、悪い・めんどくさいクライアントを線引きしてみるようになるんじゃないだろうか。経験年数を積めば積むほど、クライアントや担当者を金銭的価値でしか見ることができなくなる
……そんな職種と思っていました。
確かにそのように見えてしまう時期も、もしかしたらあるかもしれません(もちろん、今もきちんとした営業対応ができているとは思っておりませんが)。ただある時、上司からいただいたアドバイスによって営業に対する意識が少しだけ変わった出来事がありました。
上司からもらったアドバイス
それは、ある企画を担当クライアントに提案していたときの話です。提案内容はお陰様で高評価を得ていたのですが、なぜかなかなか結論の話を得られませんでした。
自分の企画は採用なのか不採用なのか? 不採用なら何が原因で不採用となったのか。そんなとき、上司からいただいたアドバイスが今でも忘れられません。
「端田くん、なかなか進展が見えないなら、こんな質問を担当者にしてみるといい。
『結論がなかなか出ない原因は何でしょうか?もし、こちらでお手伝いできることがあれば言ってください。
例えば、稟議再申請の際に、別の資料が必要で、当社で作成できるものなら作ります。完成イメージのカンプなのか、グランドスケジュールなのか、概算費用書ではなく、費用の内訳が明記された明細書なのか、その点、教えてください』と。」
続けて上司はこう言いました。
「何より大事なのは、営業とはクライアントのために、クライアントと同じ視座に立脚すること。
窓口となっている担当者が自社のビジネスを成功させるためには、当社と業務提携することが必要だと思ってくださったのであれば、その窓口の方が上司を説得するために必要なことは何かを常に考え、クライアントや担当者にきちんと寄り添うことが何よりも大切なことなんだよ」
と。つまり、営業とは自社の利益をきちんと得られるよう仕事を受注する職種であると同時に、クライアントの売上=ビジネスの成功を、クライアントと同じ目線で考え、常に相談にのったり、対応する職種であるともいえます。
営業は何をする?
以上のように、営業とは生業の営みで、それは自社の利益確保に限られたことではなく、クライアントの生業の営みにも貢献できるよう、クライアント、担当者に寄り添った上で、きちんと利益を確保していく職種であると説明しました。
この営業の定義は、今でも自分にとって大切な定義であり、自分にとっての営業の理念・コンセプトのように捉えながら日々活動しています。
そして、この2つの理念を抱きつつ、自分の営業活動が結果として実り始めたとき(実り始めそうなとき)、さらに大切に思っている言葉があります。
「営業は、クライアントの案件について、いつも金、人、時を考える」
「クライアントにとって必要なリソース、生産ラインを常に確保できるよう、常に社内外のネットワークの拡充に努める」
上述「生業」に関わる定義が営業の「理念」であるのに対して、これらの定義は営業の「使命」ともいえるかもしれません。
それぞれについて、もう少し細かく見ていきます。
金
つまり「予算」です。イベントを開催するにしても、チラシ広告を出すにしても、WEBサイトを制作するにしても、予算が明確でないと我々業者はどれくらいの規模のイベントやWEBサイトをつくりあげたらいいのか想定できなくなります。
もちろん、こう切り返されることもあります。
「予算いくらですか?」
Aパターン:「予算ねぇ……どれくらいかけるの? こういう場合」
Bパターン:「安ければ、安いほど」
Cパターン:「◯◯万円」
若かりし頃の僕は、「先方が予算を明確化できていないから、受注できない」と勘違いしていました。そんなとき、先輩営業マンからは「予算を明確化してあげるのも営業マンの役割だし、そこまで任せられれば本当に信頼されている証拠」と教えていただきました。
人
アサインするスタッフやパートナーなど、リソースを広義にとらえれば、印刷機などの確保もこの「人」に当てはまります。特に年末や年度末はリソースの確保が困難になる時期です。若手の営業マンは、そのような繁忙期直前に「お願いできますか?」とアサインを求めてきて、担当ディレクターから断られたりすることも少なくありません。
ですので、営業は繁忙期を迎える前に社内に根回しをしておきます。仮に繁忙期が12月とするなら、その半年~1年くらい前が目安でしょうか。「去年の12月は忙しかったよね? 今年もそうなりそうだから、まだ早いと思うかもしれないけど、今から事前提案して慌てないようにしたいんだ」というような事前交渉や準備をしておくことになります。社内のリソース確保が難しいかもという兆候をその時点で掴めたら、パートナーも保険として確保しておきます。
時
さて、「人」を確保するために考えなければならないことがあります。それは、「時」すなわち「いつ、その案件は動き出すのか?」の把握です。この情報は、もしかすると上記2要素よりも重要かもしれません。なぜなら、事前に「いつ動き出すか」が把握できていれば、リソースを確保でき、ギリギリのスケジュールで校正作業などを行う必要がなくなり、クライアントの負荷を軽減できるからです。
この「時」を押さえることのメリットは、受注者側がクライアントの販促・広告計画を把握できるため、制作進行の効率化につながることです。そして、何よりもスケジューリングも含めてイニシアティブを得られるため、「これなら任せて安心」「丸投げできるから楽!」と、強固な信頼関係の構築につながります。
生産ラインの確保
以上、3要素をきちんと確保することを総合的に示唆した言葉が「生産ラインの確保」です。金・人・時について事前にしっかりと掌握できていれば、クライアントのストレスや負荷を軽減させられ、安心して相談・依頼、さらには丸投げできます。
まとめとして
以上が、10年弱の営業経験者が考える「営業とは何か?」の意味となります。あくまでも経験的な事柄のまとめですので、決してこれが絶対に正解というわけではありません。
WEB系・広告系の表現方法や技術は日々進化しています。扱う商材やサービスが進化すれば、営業の定義、活動内容も変化していくはずです。そういう意味において、上述した内容は不変の正解にはならないのですが、最後に1点だけ「これは営業の定義に含まれない」ということを述べて終えたいと思います。
それは、営業は「御用聞き」ではないということです。「御用聞き」の意味は多岐にわたるため、正確な定義付けをしなければ説明にはならないと思いますが、それはまた別の機会に。まずは、上述した営業の定義を知ることによって、みなさんの営業活動の何かお役に立つことができれば幸いです。