屋内外の撮影ディレクションで失敗しないための準備と、当日の注意点
撮影はWebサイトやパンフレット、ポスターでオリジナルの人物や商品を見せる場合に行います。撮影を円滑に進めるために、アートディレクターもしくはデザイナーが「撮影ディレクション」をすることになります。初めて自分が撮影ディレクションを行う場合、基本の流れが頭に入っていても、戸惑ったり不安になったりするものです。何しろ撮影現場は想定外の状況が起きるのが当たり前と考えておく必要があるくらい、色々発生します。
そこで、今回は撮影ディレクションにおいて私が事前に行った準備や実際に起きたこと、ディレクションを行って気づいた注意点についてまとめます。撮影ディレクションを控える新人ディレクターは参考にしていただければと思います。
※スタジオ撮影がメインの場合、別の注意点も必要になるのですが今回は屋内外で動き回る撮影についての対処法をご紹介します。
1.撮影でよくあるハプニングと対処方法
ポイント:最初からきっちりスケジュールを決めない
物撮りならまだしも、人物の撮影だと何が起きるかわかりません。まだ最初の段階ではざっくりしたスケジュールをイメージしておきましょう。急な変更に対応できるよう準備を整えながらスケジュールを組んで行くと、慌てず柔軟に対応できます。
例えば実際に起きたことだと、次のようなものがありました。
- 突然撮影スケジュールが変更になった(撮影対象者の都合や体調不良)
- 撮影対象者が着てきた服が想定と違う
- 屋外での撮影で天候不良
- 屋外の撮影場所近くで想定外のイベント開催
この他にも多数、現場では想定外の出来事が起こります。重要なのはハプニングにどう対処するかです。当たり前のことですが事前に想定しておくといざという時慌てずに済みます。上記のような問題が起きた時に私が想定していた対処方法を次にまとめました。
1.突然のスケジュール変更
- 人物以外の撮影カット(物や風景イメージなど)を撮影スケジュールの最終日に予定しておいて、空いてしまった時間に予定を繰り上げて行う。
- 素材写真として使えそうなカットを現場の周辺で探しておいて、その撮影時間に回す。
2.撮影対象者が着てきた服が想定と違う(こちらで衣装を用意しない場合)
- 時間に余裕があれば代わりの服を探して、着替えてもらう。
- あまりやりたくはないのですが、時間が無く着替えられないときは後で色加工で対応する。色加工を想定して撮影を行う。
3.屋外撮影時の天候不良、雨予報、真夏日
- 可能であれば屋内に変更する。屋内での撮影に使えそうな場所をあらかじめ確認しておく。
- 屋外が必須であれば、別日の撮影が可能か探っておく。
4.屋外撮影場所近くで想定外のイベント開催
- 撮影場所を変更する。そのためにロケハン等で他に撮影可能な場所があるか周辺を探っておく。
- 別日の撮影が可能か確認する。(当日)
- しれっと撮影強行する。※ほどほどにしましょう。
これ以外にも色々なことが起きますが、一番無駄になってしまうのは何もしない時間ができてしまうことです。その場で判断できるよう、事前にさまざまな想定をして準備しておくとハプニングにもある程度対処できます。
2.香盤表作成のコツ
ポイント:撮影に関わる情報を全て集約させる
香盤表とはいわゆる「タイムスケジュール」です。撮影に使用する小道具や撮影時間、イメージ、対象者などを詳細にまとめた一覧表です。関係者の認識のズレを防ぐために必要なツールで、香盤表を基準に撮影が進みます。
下記は香盤表の例です。必要な情報に加えて会議中のメモや懸念点なども洗い出しています。
撮影中は香盤表とのにらめっこになるので、あらゆる情報をまとめておけばすぐに確認できます。全て頭に叩き込むこともいいですが、他のスタッフと共有することも考えると香盤表にアウトプットしておくことをオススメします。
3.カメラマンとスムーズに仕事をするには
ポイント:カメラマンとの連携が大事
カメラマンは写真の完成度を左右する大事なポジションです。そこで上手くコミュニケーションが取れないと撮影が上手くいかないこともあります。「プロに任せるので大丈夫」と思わずに、カメラマンが集中できる環境づくりも撮影ディレクションの一部だと考えましょう。主に注意することは以下の4つです。
1.具体的な写真の「イメージ」と「目的」をカメラマンと共有する
「撮影した写真を使って、誰に何をどうやって伝えたいのか」を自分の中で固めておかないとカメラマンに指示が出せません。現場で構図に迷ったときにカメラマンに相談することはできますが、制作物の「イメージ」「目的」は事前に共有しておきましょう。共有した上でカメラマンと構図を探った方が、いいカットが撮れることが多いです。
2.撮影時のポジショニング
ディレクターが現場で行うべき業務には次のようなものがあります。
- 撮影イメージの確認
- 撮影指示(アングルやポーズなど)
- クライアントとの折衝
- タイムキーパー
- 映り込みの排除・整理
- 撮影対象者の服装、髪型のチェックと直し
- 撮影後の原状回復
- 交通、通行人整理
ディレクターがカメラアシスタントを兼ねる場合でも、ディレクションの仕事を行いやすいように動きやすいポジショニングをとっておく必要があります。
現場によって最適なポジションは異なるので、その場で必要な動きと、次の動きを意識しながら自分の立ち位置を探っておくと、徐々に感覚がつかめます。
3.カメラマンの機材にはむやみに触れない
カメラマンの荷物は多いので、私も始めの頃は荷物持ちを手伝わないとと思っていました。しかし、上司から「親切心でも、許可なくカメラマンの荷物に触らないように」と釘を刺されました。
たとえ親切心でもカメラマンの商売道具を壊してしまっては元も子もありません。精密機器も多いので、荷物持ちをする場合はカメラマンに一言「荷物持つものありますか?」と聞いてみてください。ちなみにレフ板はよく持ちます。
4.細かな気遣い
体力が人一倍あるカメラマンですが、疲れたりすると効率が落ちることもあります。タイミングを見て、休憩をとる時間があれば差し入れ等を買って休憩しましょう。
新人のうちは余裕がないことが多いですが、関係性を作る上でも大事なことです。お互いに気持ちよく仕事ができるよう気配りしましょう。
4.まとめ
ポイント:コミュニケーションを大事にする
他にも注意すべきことはたくさんありますが、一つだけ大事なことを伝えるとしたら「コミュニケーションを大事にすること」です。
絵作りに専念する期間と予算があれば話は別ですが、基本的にクライアントから求められるのは「時間内でスムーズにいい写真をとること」です。初めての時は周りと意思疎通を図ることを意識すると、自分の足りないところを補ってもらいながら撮影を進めることができる…かもしれません。
最初は誰でも失敗しながら覚えます。撮影で何が起きるかわからないのは経験を積んでも同じなので、初めての方はこれからたくさん挑んで失敗して、力をつけてもらえればと思います。